名古屋で想起されたこと

昨日、名古屋に到着後、トークショーが始まるまで時間があったので、20数年前、出版社に勤めていた時にお世話になった書店さんに行こうと思いつき、地下街を進みました。その書店があった地下街の案内板を観て愕然としました。その書店の名前が載っていなかったのです。

この書店を訪れる時は、いつも時間に余裕を持っていました。というのは、書店で店長さんを呼び出すと、その店長さんは店員に「ちょっと出てくる」と言って、一緒に喫茶店に行くのが常だったからです。喫茶店では、店長さんはアメリカに留学している息子さんの自慢話など四方山話に花が咲きました。僕の方からは他店でのベストセラーの動向やアイディアなどを提供し、1時間ほどしてから最後に「今日は何なの?」と店長が切り出すのです。「今回は新刊のご案内と追加注文のお願いに」と伝えると何も言わずに注文表に書き入れてくれたのです。このお店は名駅の地下街にあり、良い場所に平積みをしてくださったために、多くの書籍が売れました。

この書店は、私の営業スタイルを確立してくれた書店でした。自分の扱う書籍を売り込むというより、書店が喜ぶ情報や、他の出版社の書籍を含めたフェアの企画を持って行ったり、心理書や自己啓発書の棚を整理してあげたりするのです。そのような、書店に役立つことを行う営業スタイルです。今、思うとwin winの関係でした。

このような営業スタイルだったので、話し込むと時間がすぐに時間が過ぎていきました。札幌に出張に行った時には、店長さんと話し込んだために飛行機の搭乗手続きに間に合わず、半分自腹を切った苦い思い出もあります。

大袈裟な言い方にはなりますが、営業では出版社と書店という二元性を超え、読者を巻き込むような企画をすることで、出版社と読者という二元性を超えることをしていました。ミュージシャン時代もそうですが、出版社での体験も、現在の仕事に活きているとあらためて気づきました。

今、あの時の店長さんはどうしているのだろう。そして自慢の息子さんも・・・。

そんなことを書店名が載っていない地下街の案内板を呆然と眺めながら、思っていました。

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