人間にとっての豊かさ

残雪がなくなった4月29日に休耕田を畑にしようと、隣りの田んぼとの間にある畝の脇を、トレンチャーで溝切りをしました。写真に写っている手前側の休耕田はそれほど保水していなかったのが、向こうの休耕田は、掘れば掘るほど水が出てきて、トレンチャーのタイヤがスリップし始め、抜け出そうと思って動かせば動かすほど、どんどん粘土のなかに埋まっていき、何をしても動かなくなりました。軽トラで牽引して引き上げるしかないと思い、片側が崖になっている、ほぼ軽トラの幅しかない畝脇を細心の注意を払って軽トラを動かし、休耕田に入ろうとしたその瞬間、軽トラの腹が畝につっかえて、今度は軽トラが動かなくなってしまいました。

大阪から農業体験に来ていた友人といろいろ試しても、トレンチャー、軽トラともびくともせず。これは地元の人に助けを求めるしかないと思い、夕方、野良仕事から戻ってきた隣人に助けを求めると、あっという間に軽トラに備品を積んで駆けつけてくださいました。トラクターはまだ倉庫から出していないとのことで、アルミブリッヂ、ジャッキ、シャベル、えんぴを使い、軽トラ、トレンチャーとも助け出すことができました。でも、男性3名でやっとできたことなので、友達が居たことも幸いでした。

恩人の隣人にお礼を渡そうとすると、「毎回そんなことしていたら大変だぞ。貸しとくから」と言われて受け取ってくれません。そのような恩人から「それにしても贄川さん、タフだね」と嬉しい言葉を戴きました。

この日、トレンチャーを倉庫から軽トラに積もうとした時に、倉庫の隣人と耕作について雑談をしていたら、「贄川さん、都会から来た人とは思えねぇな。今度はユンボの操作を覚えたらどうだ。操作を覚えれば1ヶ月レンタルして自分でできるすけ。除雪にも使えるからいいぞ。でも、あと1ヶ月経ったら時間ができるから、ユンボを持って行って茅の抜根と溝切りをしてやってもいいぞ。ビール三本くらい貰えればいいから」との嬉しい言葉。

地元の方たちは、いくら高尚な話をしたとしても、話半分にしか聞きません。彼らは言葉よりも行動で人間力を見定めるように思うのです。ですから、地元の方々に感心されるのは、農家としての一員に認めてくれたように感じて、嬉しいのです。思い通りに作業が進まなかったおかげで、地元に包まれる喜びをひしひしと感じた一日となりました。

夕方、私が料理をしている間、泥まみれになったトレンチャーをずっと水洗いしてくれた友人。彼は、今年1月に関西大学で講座を行った時に参加してくれた臨床心理士の男性で、思春期を困難な環境で過ごしている子どもたちの居場所を作りたいと思っている真っ直ぐな好青年です。今回、春先ということもあり、農作業というより土木に近い作業をして貰い、途中で機械が動かなくなるという事態になりましたが、地元の方々の心意気に触れ、コミュニティのつながりを実感して貰えたことで、居場所作りの大切さを肌で実感して貰えたのではないでしょうか。人と向き合う専門家に、自然のなかで汗水垂らして身体を動かし、地元の方たちと交流するという体験を通して「人間にとっての豊かさとな何か」という問いを持って貰うことは、私にとっての喜びです。

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