アレクサンダー・ローエンへの手紙

フレデリック・ローエンが父、アレクサンダー・ローエンに宛てた手紙の内容をシェアします。フレデリックの熱い思いが伝わってくる重要なメッセージです。BIPSディレクターの一人、国永史子はフレデリックと親交があることから、今回国永が手紙を訳しましたが、フレデリック本人を知っているからこその印象を述べています。

「フレッド氏はとても温厚で、ローエンに、そして母に十分かわいがられたと思われる人物です。その彼が海賊どもなどというすごい言葉を使っていることにびっくりして、ちょっとドキドキして訳しました。」

ちなみに以下の手紙は、アレクサンダー・ローエン財団より送られてきたものです。
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アレクサンダー・ローエン没後10年

ローエン生誕1世紀、没後10年
ローエン博士の革新的な仕事は、今日の目まぐるしく変化する世界にあっては非常に重要な意味を持ち続けています。

父にあてたフレデリック・ローエンの手紙

父さん、こんにちは。

あなたが亡くなって10年たちました。あなたとシェアしたいことがたくさんあります。あなたの叡智、優美さ、共に過ごした時間、話し合ったこと、冒険の数々が懐かしい。もちろんあなたと母さんは、今も私と一緒です。そしてこのような狂った狂気の世界を乗り切る手助けをしてくれているのを感じます。生前あなたが多くの人々の混乱や動揺を乗り切る手助けをしたように。

ご覧の通り私は、あなたの足跡をたどりながら、心理療法家、社会科学者として活動しています。あなたが私に語りかけ、時には私を通して話をしてくれます。というのも、話をしているのは私ですが、わたしの耳に届き、繰り返しているのはまさにあなたの言葉ですから。

あなたの革新的な仕事が今なお時代の最先端をいっていることを知れば、喜びと同時に失望の気持ちもわくでしょう。直接、からだと感情に働きかけるというあなたの仕事が、あまり発展していないからです。21世紀は性的活動が活発かして、オープンになったとは言ってもセクシュアリティ自体はより抑圧されているのですから。 それと同じように感情もまたクライアント、セラピストの両方にとって恐れの対象のままであり、彼らをさらに頭と自我防衛へと駆り立てます。

あなたが「生きる不安、恐怖」の中で書いていますが、恐怖と運命はとても密接に関連しています。あなたの恐怖が実現してしまいました。からだと感情に直接働きかけるという素晴らしく、シンプルなあなたのワークは、からだについて話すということになり下がったのです。認知科学の革命や神経科学への強い興味には妥当性、有効性、そして重要性は認められるものの、感情、情動、そして命を客観視する方向をさらに強めたといえるでしょう。これらのアプローチは心とからだの分離を深刻化させ、思考と感情の間の断絶を癒すという面では逆効果の働きをしています。人々は前世紀に比べると、よりつながりがたたれ、自分の気持ちを恐れています。

社会がこれまでにないほどひどい機能不全におちいっていることは、偶然ではないのです。その理由を理解している人がなんと少ないことか。理由の一端はライヒやローエンを深く理解している人がほとんどいないことです。 私の知る限り、ライヒの「ファシズムの大衆心理」は社会の機能不全について書かれた最も進んだ、優れた分析書です。同様に50年前、私たちはあなたの本、考えが時代の50年先を行っていると思っていました。ところがその50年がたった今では、100年先を行っているというべきでした。

社会を取り巻く環境は今や絶望的と言わざるを得ない。おそらくは、感情を評価、尊重する流れが生まれ、根っこのない(グラウンディングのない)つながりを絶たれた思考への挑戦となることでしょう。政治家やリーダーに姿を変えた、海賊ども、略奪者たちが推し進める破壊的は認知イデオロギーとその結果の政策は、チャージ不足のからだから切り離されたチャージ過剰の思考が生み出したものです。ですから、それらはすべて自然や現実との関連が断たれているのです。

父さん、ありがとう。やらなければならないことは山積みですが、あなたは私たちが共有している無意識と機能不全という本質にとっては必要な光そのものです。

追伸

あなたの友人の一人がまた亡くなりました。今年の夏、50年前にあなたと一緒のときに会って以来、初めて訪ねていく計画を立てていた矢先、スタンレイ・ケラーマンが亡くなりました。そしてあなたの魂の友アーサー・ヤーノフも昨年亡くなりました。これらエネルギー、感情、そしてからだに取り組んだ人間性豊かなパイオニアが相次いで亡くなる状況には強い恐怖を覚えます。深い叡智が滅びる思いです。

フレデリック・ローエン
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年をとるにつれ、別れの感覚はゆっくりと薄れていく。老人は自我のレベルでは生きていない。彼らの関心は個としての自分ではなく、命、家族、共同体、国家、人々、動物、自然、命の川、流れへと変わっていく。命がポジティブに続くことを確信できれば、心安らかに死ぬことができる。なぜならば自分が再び川の一部であると、そしてこの間もなく大海の一部になると感じるからである。非常に老いた人はもはや私たちの時と空間には存在せずに、すべての時と空間に属しているのだ。

アレクサンダー・ローエン

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