奥にひっそり佇む場所

昨夜は、上越市の中山間地域で、雪のなかに10万本以上のロウソクを灯す催し「灯の回廊」がありました。越後奥寂庵を構えてからの10年間、毎年、ロウソクが灯る非日常的な異空間に魅せられていますが、いつも心惹かれるのは、観光客が訪れる人気のスポットではなく、車が殆ど通らず、見物客もいない、人知れずにロウソクが灯る風景です。

もちろん素晴らしい雪の作品がある場所や、出店があって賑やかな茶屋で、地元の方々と談話するのも好きなのですが、そのようなハートで感じる温かさの奥にある、内なる静寂をどうしても求めてしまいます。このような静寂を味わえる場所を15年前に探し始め、様々な土地に身を置いてきて5年後に辿り着いたのが、越後の地でした。

観光地でもない、不便で過酷な自然環境にある場所だからこそ味わえる静寂。奥にひっそりと佇む場所にようやく出会え、「越後奥寂庵(Inner Silence Hermitage)」と名付けました。ですから「灯の回廊」でも、奥にひっそりと佇む風景に惹かれるのは仕方ありません。しかも、先日の不思議な感覚を味わった後は、以前にもまして静寂のなかに入り込みたくなります。東京オフィスのセッションルームは地下なので静かですが、同じ静けさでも、越後奥寂庵での静けさ、特に雪に囲まれた静けさは浸み入り方が全く異なりますから、ここでの時間は貴重です。

ロウソクの灯る、先が見えない道を観ながら、「私は何処に向かうのだろうか」と自分に問うていました。外界を観ているけれど、内奥に向かう道のようでした。

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