庵主からのご挨拶

 

内なる静寂を求めて

 

1990年以来、私はアメリカ、ブラジル、フランス、ドイツ、イタリア、スイス、イギリスなどから来日した多くの先生に就き、ボディサイコセラピー(身体心理療法)やボディワークを学び、数多くのセッションをこなしてきました。学びが進み、多くの人にセラピーを提供するうちに、西洋から学んできた手法を東洋の文化に統合したいという気持ちが沸き起こりました。なぜなら、西洋人とは微妙に異なる精神構造を持つ日本人に対しては、西洋の手法をそのまま用いるのではなく、修正して用いる必要を感じたからです。そのためには、もともと禅仏教やアニミズムに興味がありましたが、まずは自分自身が、日本的な方法で内面を深める必要がありました。

1994年に、肚が開いて気が充満した体験をして、その時に鏡のように静まった湖面のような内側の静寂、スペースがあるのに満ちている感覚、穏やかさを体験しました。それ以来、私は意識を向けると「内なる静寂」を味わうことができるようになり、その「内なる静寂」を深化させ、誰もが体験できるような環境を探し始めました。

 

 

私たちの精神構造は、環境に思っている以上に影響を受けます。それは母子関係に代表される人間関係のみならず、住まいの構造や周囲の環境にもです。そのことから、日本人の精神構造を理解するためには、まず自分自身を昔ながらの田の字型の民家に身を置いてみて、身体面、感情面、思考面にどんな影響を受けるかを体験したくなりました。観光地化されていない里山を探し回り、2009年に新潟県の中山間地域に100年前に建てられた古民家に出会いました。この古民家には周辺の空間は、まさに「内なる静寂」を体験できると実感したことで、手に入れることにしました。

手に入れてからの7年間で、農作業や掃除、地元の方々との交流などを通して、少しずつ日本人が元々持っている美質を感じられてきました。その結果、自己を確立するための西洋的自我を肯定しつつ、自分自身を「場」「自然なるもの」に明け渡していく日本人の美質は、この混沌とした世の中にとってとても大事なことだと痛感し、一人でも多くの人に味わって頂きたいと思い、農家民宿を開くことにしました。

 

 

越後という大地

 

仏教学者の鈴木大拙氏のご著書「日本的霊性」のなかでは、日本的霊性を深化させた二つの流れが記述されています。一つは禅仏教であり、もう一つは浄土教です。大拙氏は、日本的霊性は決して京都では起こらず、大地性に根付いて起きるべくして起きたことに言及し、特に親鸞聖人が越後に滞在したことを強調しています。この地には、高田には白隠禅師、直江津には上杉謙信公、国上山には良寛さま、佐渡には日蓮聖人と、日本仏教にとって多大な影響を与えた偉人が住んでいました。

この地には、まだ日本的霊性が現存しています。ぜひ、昔ながらの「いとなみ」をしながら、日本的霊性を一緒に深めていきませんか。

 

 

贄川治樹 略歴

 

農家、国連NGO WCP(World Council for Psychotherapy)公認心理療法家、ドラマ−、パーカッショニスト、リズムセラピー研究所所長、BIPSディレクター&国内トレーナー、EABP(European Association for Body Psychotherapy)認定トレーナー、バイオシンセシス認定ボディサイコセラピスト、シン・インテグレーション上級施術者、セロトニンDojo師範、場の研究所研究員、ヤマハ株式会社音楽と健康プロジェクト・元アドバイザー。

1992年マーク・カフェル博士に師事し、1年間南アルプス山間集落でボディワークの研鑽を積み、1993年から現在まで、延べ数万人の方に深部組織ボディワークを行う。1993年より5年間のバイオシンセシストレーニングに参加し、1998年に資格を得る。その後、ボディサイコセラピーの個人セッションを行うとともに、ワークショップを主催する。2006年よりBIPS国内トレーナーとして、セラピスト養成を行い、同時期にボディサイコセラピーに音楽を取り入れたリズムセラピー研究所を設立。九州大学、関西大学、セロトニンDojo、KHJ引きこもり親の会、韓国政府青少年委員会主催国際シンポジウム、不登校のサポート校、日本産業カウンセラー協会東京支部、リーダーシップ世界大会、コーチングフェスタ、重度身心障がい者授産施設、自治体の介護予防教室、乳幼児突然死症候群国際会議、ヤマハ音楽振興会、場の研究所などで講演と演習を提供している。2013年には日本的霊性を深めるために、場の研究所の研究員となる。2014年1月から2月にかけてインドのKaivalyadhama Yoga Institueにて Shri. O.P. Tiwari師に師事し、プラーナヤーマを学ぶ。2015年12月よりセラピューティック・ボディワーク連続講座を毎月東京で開催して後進の指導に当たり、2016年2月には上越市で農家となる。2016年7月と10月には、和太鼓芸能集団「鼓童」の名誉団員である小島千絵子さんとワークショップ、コンサートを行うなど、東京と上越で勢力的に活動を展開中。