全体のコンセプト

 

いのちのいとなみワークス

 

全体を貫く基本コンセプトは「いのちのいとなみ」です。越後奥寂庵では、農作業、自然散策、薪割り、餅つき、山菜採り、郷土料理など、自然のリズムに同調した「いのちのいとなみ」を中心に置き、体験をしていきます。それを補うために、非日常的な空間で行われるボディサイコセラピーボディワークドラミング、 呼吸法など専門性の高い手法をオプションとして提供しています。そうすることによって、セラピーでの内的体験を日常に根づかせやすくなりますし、もともと日本人としての遺伝子に組み込まれた「いのちのいとなみ」にアクセスすることによって、日本人としてのアイデンティティ、日本人としての在り方を取り戻すことにもなります。この「いのちのいとなみ」は、都会で行うエクササイズに比べて遙かに有機的であり、身体、心、霊性をも包含する力を備えているのです。非日常的な空間で行うボディサイコセラピー、ボディワーク、ドラミング、呼吸法などと、地域に根ざした「いのちのいとなみ」の両方を行う活動を「いのちのいとなみワークス」と名づけました。形式としては、宿泊型のパーソナル・リトリート、少人数のグループ・リトリートが主になります。希望があれば企業研修、外部団体との提携企画も行います。他の宿泊施設を利用した海外から講師を招聘して行うリトリートは、越後奥寂庵公式サイトをご参照ください。

 

いのちのいとなみワークスに至った経緯

 

セラピーは、身体、心、生命エネルギーすべてにおいて個人の変容にとっては重要なものです。その中でも特に重要な点は「そこでの体験を如何に日常生活、生き方、環境に統合するか」という点になります。セラピーは非日常的な空間だからこそ、安心して内面を探ることができる訳ですが、そこで生まれた新しい自分、或いは本来の自分を、どのように日常で表現し統合していくか、というのがかなり重要な部分になるのです。しかし残念なことに、セラピーによって鎧が溶けて繊細な本質と繋がった人間、遊び心と創造性に満ちた柔軟な人間にとっては「どのように生きていけばいいか」ということを模索するのが困難な時代になっています。それは多くのクライアントさんを観てきて感じるのです。なぜなら現代社会では、心で何を感じているかということよりも目に見える成果や効率性が求められ、パソコンなどの頭脳労働が圧倒的に多くなったために、生活のなかで五感を働かせながら全身を使う「いのちのいとなみ」が昔に比べると圧倒的に少なくなっているからです。特に3.11以降、個人を支える社会的、環境的、精神的な器が希薄になったために、新たな可能性に対して心を開く余裕がなくなり、既存のシステムのなかでサバイヴするだけにエネルギーを取られ、個人にとっての生き方や在り方を振り返ることが困難になってしまいました。

 

 

在り方というのは、頭で考えただけでは実体感を伴いません。日々のいとなみのなかで、大地に足の裏を着けて下半身を働かせ、肚(はら)を充実させることによって自ずと自己の中心が定まり、結果として在り方が変わってくるのです。もともと日本人は、大地に根ざし、肚を据えて肚で考え、行動していました。上半身を過覚醒させた思考優位の状態から、下半身を活性化させて、人間としての全体性を取り戻す必要があるのです。頭脳労働やストレスフルでスピードを求められる都会では、どうしても交感神経優位となるために腹部から血液が撤退し、肚が充実するどころか、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、過敏性腸症候群など消化器系の疾患になったり、お腹が空っぽな感覚を味わったりしやすいのです。そこで、都会から離れ、日本人にとっての霊性、自然、文化、生活形態、いたわり合う関係性、コミュニティ・・・それらの「いのちのいとなみ」が現存する越後の中山間地域に身を置き、生活のなかで身体と心を整え、五感を開いて自己の可能性が開花する機会、 自分の在り方を取り戻す機会を提供したいと数年前より思ってきました。

 

 

また、リズムセラピー研究所では「自然のリズムと同調しながら、自分のリズムで人生を歩んでいきたい方のために」と標榜していますが、「日の出とともに目覚め、日の入りとともに休息する」という自然のリズムで生きることも、刺激の強い都会では、よほど強い意志を持たなければ困難です。東邦大学医学部名誉教授でありセロトニンDojo代表の有田秀穂氏が言及しているように、自然のリズムと調和した生活の欠如、ストレス、パソコンなどの作業が、脳内伝達物質のセロトニンを減少させ、うつ病 やパニック障害を発症させてしまうリスクを高めてしまいます。現に、インターネットの普及率とうつ病の発症率には比例傾向があります。私はセロトニンDojoの師範としても、自然のリズムのなかで自分のリズムを取り戻すことも提供したいのです。自分のリズムで生きることと個人の在り方は、密接に関連しあっていますし、平穏や平静、少欲知足というセンタリングが取れた状態とセロトニン活性も関連していることも興味深い点です。